庭舟

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               *** ひどく鮮明な夢を見たせいで動転してしまっていて、次の日は夕方までどうすごしたのか覚えていない。 それもこれもダイヤと銃弾のせいなのだけれど、あれが本物かどうかすら、今の佐奈に確かめる(すべ)はなかった。 ――ただそうやって悶々(もんもん)としている間に、事の顛末(てんまつ)は簡単についてしまっていたのだ。 「けっ……警察に、届けたあ?!」 夕飯前、廊下の暗がりで周に耳打ちされた時は、心臓が飛び出るかと思った。 「そうだよ。だって佐奈姉が、誰かの忘れ物かもって言ったから」 ええ言いました、たしかにそう言ったけど、ちょっとまてっ。 「姉ちゃん、物置の前に置いとくんだもん。遊ぶのに邪魔だしさ。今日、学校帰りに交番に寄って、おまわりさんに届けたよ。『落とし物で~す』って」 落とし物じゃないでしょ、と突っこみたかったが言葉を飲みこんだ。周の語彙力では、あの袋も落とし物の部類に入るのだろう。 「で?!」 「おまわりさん、いたんだけどさ。一人は電話してたし、もう一人は椅子に座ったおじいさんと長ーくお話ししてたからさ?」 周は無邪気にVサインをしてみせた。 「僕、袋を入り口のところに置いて帰ってきた」
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