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ひどく鮮明な夢を見たせいで動転してしまっていて、次の日は夕方までどうすごしたのか覚えていない。
それもこれもダイヤと銃弾のせいなのだけれど、あれが本物かどうかすら、今の佐奈に確かめる術はなかった。
――ただそうやって悶々としている間に、事の顛末は簡単についてしまっていたのだ。
「けっ……警察に、届けたあ?!」
夕飯前、廊下の暗がりで周に耳打ちされた時は、心臓が飛び出るかと思った。
「そうだよ。だって佐奈姉が、誰かの忘れ物かもって言ったから」
ええ言いました、たしかにそう言ったけど、ちょっとまてっ。
「姉ちゃん、物置の前に置いとくんだもん。遊ぶのに邪魔だしさ。今日、学校帰りに交番に寄って、おまわりさんに届けたよ。『落とし物で~す』って」
落とし物じゃないでしょ、と突っこみたかったが言葉を飲みこんだ。周の語彙力では、あの袋も落とし物の部類に入るのだろう。
「で?!」
「おまわりさん、いたんだけどさ。一人は電話してたし、もう一人は椅子に座ったおじいさんと長ーくお話ししてたからさ?」
周は無邪気にVサインをしてみせた。
「僕、袋を入り口のところに置いて帰ってきた」
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