庭舟

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嘘でしょ。佐奈は体中から力が抜けていくような感覚に襲われる。 けれど、それでお終いではなかった。 「え? 裏庭にあった汚い箱のこと?」 夜、洗面所で化粧を落としながら母は首をかしげる。 「やだあ。あれって、佐奈ちゃんのだったのお? 周が『燃えないゴミ、出しておいてね』っていうから、お母さんもう、ゴミの回収所に持って行っちゃったわ」 佐奈ちゃんすまないことをしたわね、でもあれって庭から出てきたゴミなんでしょ? お母さん、向かいのおばさんから聞いたんだけどね、この家が建つ前ね、ここ、空き地でね。一時期、不法投棄のゴミ捨て場みたいになってたんですって。 「だから今でも花壇の手入れしてると、さびた釘やらプラスチックの破片や、腐食した電池なんかが、出てくるのよー。本当に困っちゃうわよねえ」 「困っちゃうって……」 あいた口がふさがらない。二日二晩、悩みに悩んだ自分が馬鹿みたいだ。でも、どこかでほっとしたのもたしかだった。
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