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綾姉が帰ってくるまでは、私がお母さんの代わりをしなくちゃ、と縁側に腰を落ちつけてはいたけれど、佐奈は本当は家の中に引っこみたくてしかたがなかった。早く宿題をやっつけてしまわないと。今夜は楽しみにしていたテレビもあるのに。
「いいもの? いつかみたいに蜘蛛じゃないでしょうねー」
蚊を気にしながら、嫌々、首を伸ばして弟の掌を覗きこんだ佐奈は、知らず息を飲んだ。
「周っ、危ない! はやく元に戻しなさい!」
叫んだとたん、きょとんと佐奈を見て首をかしげた弟の額から玉の汗がこぼれ落ちる。
そして佐奈は弟の手にあるものがガラスの欠片でないのに気づいた。母が入学式につけていた真珠の首飾り――あの玉ほどはある硬質で純白な石たち。派手な輝きを放つ。
(嘘。ダイヤモンド……?)
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