庭舟

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すると周は画像の停止ボタンを押したように動きを止めた。疑わしげに佐奈を振り返り、 「……本当に怒られる?」 力をこめてうなずくと、次の瞬間、袋が宙を舞い、佐奈の足下に落下する。 「ちょっと周、もっと丁寧にやりなさいよー」 「あ。まだなんかあった、別なの」 佐奈の言葉など耳に入らぬ様子で、弟はなお底をいじっている。 「うーん……お菓子の缶みたいだ。なんだろ、堅いなぁ」 渡してやったシャベルを、がつ、がつ、と打ちつけ始めた。 「ねえ、もういいよ。いい加減にしなよ、周」 クラスの男子もそうだけれど、どうして男ってこう人の話を聞かなくて面倒くさいんだろう。ため息をつきながら、麻袋を拾い上げて中身を調べる。 やっぱり、これって、どう見ても。 宝石にしか、見えないんだけど。 おはじきみたいな音を立てて中の石が光を放った時、 「姉ちゃん、取れたよ!」 周が勢いよく手を引き抜いた。 「見て! なんか壊れたけど」 壊れたというか……さびついた蓋が真っ二つになって、あちこち歪んだり亀裂が入ったり、箱としてほぼ全壊に近い。 「すげー! ほらなんか、武器みたいなのが入ってるっ」 その声でようやく中身に目が行き、佐奈は青ざめる。 「かっこいい。これで友達と戦いたい!」 「だめよ! 姉ちゃんに渡しなさい!」 腹の底がぞうきんを絞ったみたいに縮む。 「えー、いやだよっ、僕が見つけたのに」 「だめったら、だめ! こういう古い金属はね、毒がしみ出たりしていることがあるんだから……」 必死に言い訳を考えながら、缶ををひったくった。
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