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その晩はふとんに入っても、身体に熱がこもって寝られなかった。
どうしてうちの庭に、ダイヤモンドと銃弾が。
背中が熱い。佐奈は暗闇を見据えながら寝返りを打つ。
脳裏に闇の組織を束ねる首領の姿が浮かんだ。きっとあれを埋めた犯人は恐ろしく強欲な悪者にちがいない。数々の犯罪歴があって、人を殺すことなんかなんとも思っていない――そんな男。
「や……やめようっ」
思わず、布団をかぶって叫んでいた。
そういえば周は、あの穴を埋め戻したっけ? 佐奈は身震いする。
まずい、シャベルもまだ庭に転がったままだ。物置の横に片付けたのは袋と缶だけ。いちおう両方ともビニール袋に入れたけど。
ああ、あの穴。
今が夜じゃなかったら、すぐにでも埋めて、なかったことにしてしまいたい。そうすれば闇の犯罪者も、あれを掘り出してしまったことには気づかないはず。
せめてダイヤだけだったらな、と佐奈は思う。どれくらい高額になるかわからないけれど、宝石を売ったお金で家のローンとやらを返せるのに。布団の中で息を吐く。
――母さん働きに出るけど、わかってね、佐奈。綾もこの冬には受験だし、塾代やなんやかやと、大変なのよ。
(私はいいけど、周はまだ……)
弟は幼い。家に帰ってきたときに迎えてくれる存在が必要なんだ。一心不乱に穴を掘る弟の丸まった背中を見ていれば、嫌でも気がつく。
お金ってそんなに大事なのかな、と佐奈は思う。綾姉に毎晩、夕飯の支度をさせ、自分に弟の世話をまかせなければならないほど。
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