この空が消えても

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「やあ。やっぱり君はここに来てると思ったよ。セルシール」  町はずれの小高い丘の上、一本の大きな木が生えていてその木の上にセルシールはいつも通り座っていた。 「あと、五分だ。ずっと君を待っていたのに。もう、五分しかない」 「ごめん、家事を手伝わされていてさ」  そういうとリーブスは木の根元に腰を下ろした。雲一つない夜空を二人で見上げる。 「夜に災厄が訪れるのは、初めてだよな」 「そうだね。どちらかといえば、夜に生きてそうなやつらなのに」 「確かに」 「今回は、ユーリオが向かったらしい」 「あー、だからか。町の皆も何でもないように過ごしていた。少し前なら俺も家事なんてしてる場合じゃなかったもんな」 「慣れるもんだな」 「でも、緊張もするよ。あと、少しで世界が終わるかもしれないんだから」  最初の魔王が復活したのはどれほど前だっただろうか。強大な力を持つその魔物の王も人類には敵うことは無かった。世は勇者千人時代。たった一体の魔王は数の暴力に敗北した。  しかし、その魔王はある魔術を死に際に発動したのだ。時限式の世界を破滅させる大魔法。しかし、その魔術も人類の叡智によってすぐに無効化された。  しかしだ。その後、次々に魔王を名乗る魔物が各地に現れその終末魔術を発動させるようになったのだ。しかも、今度は登場と共に。最初は一周間後とかだった終末魔法もドンドン短くなっていく。  今日の魔王の厄災はなんと一時間。一時間後に世界が滅ぶ魔法なんていつの間に出来上がったって話だ。  しかし、その魔王の元に向かったのは生きる伝説【覇王ユーリオ】が率いる勇者軍だ。彼のことなら、報告が来ていないだけで既に厄災を止めている可能性もある。 「もしさ、今日ユーリオが止められなかったら俺ら死んじゃうんだよな」 「俺らが死ぬってより、世界が死ぬんだよな」 「世界が死ぬってどういうことなんだろうか」  リーブスが上を見上げると、真剣な顔で夜空を見上げるセルシールの顔があった。 「この夜空も、消えてしまうのだろうか」 「世界が暗闇に包まれるって言われているからな。この夜空も見えなくなるんじゃないだろうか」 「暗闇の中でも人類は生き続けるという話もある」 「いっつも、こんな話ばかりだよな」 「当たり前だ、いっつも、世界が終るとどうなるんだろうなんて話し合っても結局勇者たちが世界を救うんだから」 「だよな……ほら」  五分たった。 「世界は終わらないか」  セルシールがため息とともに、立ち上がろうとしたとき、鈍い音が隣から響いた。 「あっ?」  それは、枝が折れる音だった。そんなに細い幹に座っていたわけでもない。座っている間に揺れも感じないほどの丈夫さがあったはずなのに。  そのままセルシールは地面に落下した。 「セルシール!!」  リーブスはすぐにセルシールに駆け寄った。血が流れている様子はなかったが、顔を歪ませるくらいの激痛を感じているようだった。 「大丈夫か? とりあえず診療所にむかおう。まったく、ドジだな」  とりあえず、見た感じ死ぬような傷もない。意識も失って内容だった。すこし、リーブスはホッとし落ち着いていた。彼を背負い、村に戻る途中セシールはうわ言のように細い言葉を吐いた。 「空が、見えない。世界は終わったのか? おい、リーブス」
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