水槽

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  その水槽を持って、崖に登った。  「これで終わりさ。何もない人生だった。でも、案外悪くなかった。」  そう言って俺は落下した。  本当にこれで終わり。  何もなかった。本当に、何もなかった。なんのために生まれて来たか、最後までわからなかった。  でも、君に会えたこと。  それは、  それだけは、  何もない俺の人生で、  唯一、  案外悪くなかったことだ。  さようならが言えなかったこと。  それを死ぬ直前になって、惜しいと思っている。  たぶん、これが恋なんだろうな。        もし、    もしもだよ?  もし、来世でまた会えたら、  なんてことない、ただの恋人になりたいな。  手を繋いだり、キスをしたり、ハグをしたり。  前世でこんなイかれた死に方をした俺には、到底無理かもしれないけどさ。  嗚呼、愛していた。  愛をしていた。    また会おう。
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