カラン、コロン。

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「飲み物買ってくるし、何かリクエストある?」 もうすぐ花火が始まってしまう時刻だというのに、柊が思い立ったように立ち上がった。 「え、でも花火始まっちゃうよ?」 「大丈夫だって。俺ハンドボール部だし、足速いから」 「ハンドボール部は関係ないでしょ!」 けらけら笑う私の頭を、柊の手が優しく撫でてくる。 「夏っぽくて、愛がたっぷり詰まったやつ買ってくるわ。待ってて」 「なにそれ!」 戯けて笑いながら、屋台に向かって歩いていく柊の後ろ姿を目で追った。胸がじんと熱くなる。 中学の時からちっとも変わらない優しさなのに、いつからこんなに大人っぽくなってしまったのだろうか。 これから先、私が隣で見ることの出来る柊の姿なんて、恐らく彼の人生の三分の一にも満たない。 私がいなくなった世界で、柊は新しい恋をするだろうし、柊を想う女の子だって沢山現れるのだろう。 それが堪らなく悔しい。 誰にも柊を渡したくない。 私以外の誰かを、好きになって欲しくない。 そんな浅ましい感情に、自分の心が日に日に蝕まれていくのが分かる。 なんて醜いんだろう。 いつまで彼を独り占めにする気だろうか。 柊の最初の彼女が私で、私の最後の彼氏が柊。 その事実が永遠に。彼の記憶の奥底に、痣のように残り続けてしまえばいい。 そうすれば、やがて私の存在が消えてしまっても、忘れ去られることは無いだろう、と。 自分の中の命の燈が、刻々と小さくなるのを感じるにつれて、そんなことを考えてしまう自分が嫌で仕方なかった。
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