ゆっくりじゃないのがいい 続き♡

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ゆっくりじゃないのがいい 続き♡

読者様の月子様リクエストで続きを書かせていただきました。プロットは月子様で、私は文字起こしとオチのみです。ぜひ可愛い秋人を堪能してくださいませ♡ ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  昨日の雷雨のあとで、天候はまだ不安定。  結局また雨が降り出して早々にロケが中止になり、先にほかのシーンをといってもスタジオも用意出来ず午前中に解散になった。  秋さんの看病ができるっ!   ウキウキの俺を呆れつつも「いつもお熱くてご馳走様です。ぐふふ……」と美月さんは送り届けてくれた。  秋さんは今朝の熱は三十八度とはいえ、昨日よりもかなり元気になっていた。そんな気持ちもあり、俺は帰宅できた嬉しさに思わず玄関で「ただいまー」と元気に声を上げてしまった。  すると、寝室のドアが開き、おぼつかない足取りで秋さんが出て来た。 「れん……なんでぇ……? おかえりぃー……」  ぽやんとした赤い顔でふわふわと甘えた声の秋さんが、ダボダボの俺のパジャマの裾を引きずるようにして、ふらふらと……いや、ふにゃふにゃと歩いてやって来る。 「秋さんっ」  慌てて秋さんを受け止めると、また燃えるように身体が熱い。  今朝は少し下がってたのにっ。  俺が横抱きで抱き上げようとすると、秋さんがコアラ抱きでしがみついてくる。でも、いつものように飛びつく元気がないから抱きつく位置が変だ。このままだとベッドに着くまでにずり落ちる。 「秋さん、ちょっといったん下ろすよ?」 「なんでぇ……やだ……」  秋さんが必死に後ろで足をクロスさせ、下りようとしない。  高熱のせいなのか、秋さんの甘えモードが振り切っている。可愛すぎる。可愛すぎてクラクラする。俺のほうが倒れそう。  なんて考えてる場合じゃない。早くベッドに寝かせないと。  秋さんを落とさないように必死で抱えてベッドまで運んだ。 「秋さん、ベッドに寝るよ」 「んー……れんも……」 「えっと、俺は寝ないよ。秋さんの看病しないと」 「やだぁ……」  ええぇ。秋さん熱出るとこんなに甘えたくんになっちゃうの?  昨日は風呂場であんなとこ見ちゃってそのままベッドだったから、全然わからなかった。  お正月の酔っ払い秋さんみたい。どうしよう。本当に可愛すぎる。  なかなか離れようとしない秋さんをなんとかベッドに寝かせ、体温計を脇に挟んで布団をかける。  熱は三十九度一分。昨日とほぼ変わらない。なんで……っ。 「秋さん。もうすぐお昼だから、お粥と薬の用意してくるね」  そう伝えると、うるうるとした瞳で俺を見つめた。 「れんも……いっしょに寝よ……」 「あ、秋さん、お昼の準備してくるから、ね?」 「やだ……れん、そばにいて……。どっかいっちゃ、やだ……」  本当に甘えモード振り切りすぎだよ秋さん……っ。  熱で頬が桃色で、目もうるうるで、俺のパジャマから覗く細い指先が俺の服をきゅっとつまむ。 「うっ、可愛すぎる……っ」  やばい……鼻血出そう……。  秋さんの願い通りにしてあげたくなる。  でも、ご飯は食べさせないとっ。薬も飲ませて熱は下げないとっ。  俺は心を鬼にして秋さんの手をほどき「いい子で待っててね」と言ってキッチンに走った。  秋さんの寂しそうな瞳が目に焼き付いて離れない。  早く用意して戻ろうっ。  一人用の小鍋にたまご粥を作る。人参と大根のすりおろしを入れた特製たまご粥。  水と薬も用意して寝室に戻り、サイドテーブルにトレーを置くと秋さんの目が開いた。 「れん……きたぁ……」  嬉しそうに破顔した秋さんが、またうるうるの瞳で俺を見つめる。  本当にもう……なんでこんなに可愛いの……っ。  もうずっと看病していたいっ。 「秋さん、お粥食べよう?」  秋さんの身体をゆっくりと起こしてベッドの背もたれに預け、トレーを膝の上に乗せる。 「わ……うまそ。れん、たべさせて……?」  熱っぽい瞳でほわほわと笑った秋さんが、可愛くお願いしてきた。  これぞ看病っ。願ったり叶ったりっ。  俺はレンゲでお粥をすくってふーふーと息を吹きかけて冷まし、秋さんの口元に持っていく。 「はい、秋さん」  でも、秋さんは口を開かず俺を見つめ続けた。 「秋さん?」  すると、また甘えた声で秋さんが言葉をこぼす。 「あーん……は?」 「……えっ、あ」  そっか『あーん』を待ってたのかっ。  ううう……可愛いい。可愛すぎる。もう本当にどうしよう。 「秋さん、あーん」  俺がそう言うと、嬉しそうにニコニコ笑って「あーん」とレンゲのお粥を口に入れた。  ……可愛すぎる。至福すぎる。 「もう一口、食べよう? あーん」 「うん……あーん」  俺は何度も悶えながらも、なんとかお粥を食べさせ薬を飲ませることができた。……俺、頑張った。  秋さんをふたたびベッドに寝かせると、よほどだるかったのか、すぐにスっと眠りに落ちていった。  ふぅ……。熱を出した秋さん、本当に最強だよ。 「ん…………れん……」  なに? と返事をしそうになる。違う、これはうわ言だ。  本当にどこまで可愛いの。  秋さんの看病をしたいという夢は叶ったけれど、危うく俺が悶え死ぬところだった……。  眠った秋さんの頭をそっと撫でながら、「早く元気になってね」と小さくつぶやいた。  夕方になって目を覚ました秋さんが、また布団にくるまって出てこない。 「秋さん、熱測って?」 「やだ……っ」 「もう、なにがそんなに恥ずかしいの?」 「……全部だよっ。ゆ……夢だと思ってたんだよっ。だってお前夜まで帰ってこないはずだったじゃんっ」 「だから雨でロケが中止に――――」 「ばか蓮っ。夢じゃないって言えよなっ」 「ええぇ? そんな理不尽な……」  そんな恥ずかしがる秋さんも可愛いから参る。  結局のところ秋さんは、まるっと全部可愛いってことだ。 「可愛い俺の秋さん、またいつでも甘えてね」 「……早く忘れろっ」  end.    
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