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イヤホンから音楽を爆音で流し、やけくそに自転車を飛ばしてみるが、この気持ちを煽るかの如く、寒さが衣服をすり抜け侵食してくる。
かといって、ゆっくり押しながら歩いていると、見ようともしていなかったカップルがイチャイチャしているのが目に入ってしまう。
追い討ちをかけるように、駅付近の歩道に差し掛かれば、仲がよさそうな学生集団が楽しそうにくっちゃべりながら道を埋め尽くし、速やかな帰宅を妨害していた。
あまりの切なさに涙も出……るわけなく、代わりにネットの海に潜り込む。スマホとタブレットにゲーミングPCを同時並列で操っていた。
「クソリア充どもが」なんてボヤきながら、男女で楽しんでいるグループへと勝負を仕掛け、片っ端から倒していった。フレンドから送られて来るのも「カップルキラー」だの「リア充キラー」だの、煽り立てるメッセージばかり。
正直、逃げなのだとは分かっているが、何も得ることのできない今を過ごすにはこうするしかない。
「ゲームばっかりしてないで、勉強しなさいよ」
リビングから母の声が聴こえるが、「そんなの学年五位の俺に言わないで、学年百六十七位のバカな妹に言ってくれ」なんて言い返して、画面へと集中する。
こんな具合で早くも十一月の最終週を終えてしまったのであった。
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