雨はいつか止む

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 ボロボロになった僕の弱さまでもを抱き締めるように彼女は甘く、唇を重ねた。そして、僕を突き刺すような真っ直ぐな目線で問いかける。 「生きてるのも苦しい? 辛い?」 「……分かんない」 「じゃあさ、私のために生きて。それを誓って」  彼女の、ため? 最初は幻聴なんだと思った。でも、しっかりと彼女の口から言われているのまで見ると、信じるしかない。  こんな時、心臓の鼓動は早くなるんだろうが、もう時間が近いらしい。弱くなり始めた脈が段々僕を恐怖の淵へと追い込んでいく。  だが、きっとそんな恐怖に応えたんじゃない。僕は––––。 「分かった」  ––––彼女のお願いに答えたんだ。  きっと、彼女自身は自分がどれだけのことを言ったかなんて分かっていないんだ。ただ、自分の言葉の重さ云々(うんぬん)よりも僕の命を救いたいが為に必死だったのだろう。そんなことくらいは分かる。だからこそ、彼女の言葉にかけたのだ。それで僕も、彼女も救われるというのなら。 「今の言葉、信じるよ。破ったら承知しない」  段々と雨もその勢いを失いつつあり、雲間から朝の日が差し込む始める。  ずいぶんと長い夜だった。  本当は、もしかすればこうして助けて欲しかったのかもしれない。逃げる場所が欲しかったのかもしれない。  だけど、それでも、この気持ちに嘘など存在しない。 「うん。僕、雨宮(あめみや) (じゅん)は君のために生き、る……」  そんな言葉を言った側から、遂に体の感覚がなくなり、ゆっくりと深い暗闇に引きずられるように意識は途切れた。
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