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自分でも、ひどい男だとは思う。体の関係は続けていながら、一度も好きだとは言ってやれていない。彼の気持ちが真っ直ぐで、その言葉に嘘偽りがないことがわかるからこそ、簡単に答えられない。
本当に彼を愛している、と思ってからでないと、その言葉は浅く薄くなってしまう。そして、彼はその鋭い耳でその向こう側を見透かしてしまいそうだから。そうしたら、きっと彼は傷付くだろう。
彼の頭をゆっくり撫でてやり、抱き締める。
彼の体は、まるで寒い場所にいるかのように震えている。火照った肌の下から伝わる感覚は、不思議にとても冷たい。
いつもそうだ。こんなとき、彼はこうして怯えるように震えている。
「ねぇ、春臣…春臣…」
「何だ?」
「ぎゅってしてて」
子どものように、抱擁をねだる。何か怖い夢から守って欲しいかのように。
強く抱き締めて応えてやる。
「大丈夫か?」
「うん…春臣」
「ん?」
「好き…」
頷いて、髪を撫でる。
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