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「勅使河原さん、すみません。この後、用事あるんです。行けません」
なるべく長く残業をしたくない私は、さっさと仕事を終わらせて帰宅しようと、せっせとタイピングしながら勅使河原さんの誘いを今夜も断る。
勅使河原さんは仕事が早くて、今日の分はもう終わっている様子でいちいち私のデスクに来て、誘ってくるのだ。
「えー、今日も?なら、いつなら空いてるの?」
諦めきれないというように、訊いてくる。
「いつでも空いてません。あしからず」
私は彼の方に目もくれずに、淡々と応える。
彼は一年前の春に私が営業に転属して来た時からずっと、食事やらデートやらに行こうと誘ってくる。
彼と食事に行きたくないわけではない。
ただ、問題はというと、彼と一対一ということ。
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