桃と俺

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采配を振るうのは上手いし、常連さんとの会話も一人一人に合わせた話題で盛り上げるのが得意で、何より癒される明るい笑顔が一番良い。 店が繁盛しているのは、接客上手の彼女のおかげだ。 俺は、純粋な笑顔を絶やさずに働く彼女に言い表せないほどの感謝の念が募った。 そして、ランチの時間帯が終わり、忙しさが少しだけ波のように引いた。 休憩中の彼女は、カフェラテを飲みながらお絵かきをして時々俺が作ったサンドイッチをつまむ百華の様子を見ていた。 「こんにちは〜」 ドアベルが鳴って、ドアの方を見ると一人のお客さんが入って来た。 「いらっしゃい」 顔見知りの彼に、俺がいつものように笑顔で出迎えた時だった。 「にしやまさん!」 百華が、今日一番のキラキラな笑顔で彼の元へ駆けて行く。 そう、彼というのは、西山君だ。 一か月に2、3回、休みの日に来てくれていた。
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