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食後のコーヒーを飲み終えるまで、百華は西山君を見つめていた。
いつもだいたいそんな感じだったけれど、熱烈なプロポーズを聞いたせいか、今日はとりわけ熱視線を送っているように感じた。
「勅使河原さん、ご馳走さまでした」
席を立つ彼に、百華は寂しげな視線を向ける。
「もうかえっちゃうの?」
久しぶりに会った彼女みたいな台詞に、俺は驚愕する。
一体どこで、そんな台詞を言うタイミングと技を覚えてきたのだろうか。
幼稚園で?
それとも、テレビか動画か?
西山君は、百華に仕方なさげに微笑みかける。
「うん、あんまり長居しちゃ悪いし」
「ももはいいのに。まだいっしょにいたい」
「百華ちゃん……」
引き離されたような哀愁漂う雰囲気を出す二人に、俺は哭き叫びたい気持ちになる。
やめてくれーっ、俺の目の前で月9並みの恋愛ドラマを繰り広げないでくれーっ!
「颯斗、落ち着いて。他にもお客様いるんだから、どうどう」
桃ちゃんが側に来て、俺の背中をさする。
桃ちゃんの手の優しいぬくもりに、少しだけ気分は落ち着く。
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