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今でも、フロアに誰も居なくなったのを見計らったかのように私の隣のデスクに堂々と座って、至近距離の今にも触れそうな距離にいる。
レモンのような香水の香りを仄かに、漂わせて。
爽やかなイケメンの勅使河原さんに、ぴったりな香りだ。
でも、爽やかななのは表面上だけだと、私は知っている。
私は彼に分からないように、椅子ごと移動する。
だけど、彼はすぐに察知して、私が離れた分だけまた近づいてくる。
「……離れて下さいよ」
「嫌だ。俺はいつだって、桃ちゃんに近づきたい」
メガネの奥の瞳を真っ直ぐにこちらに向けて、真剣な声音で言う。
「それ以上近づいて来たら、セクハラで訴えます」
「うーん、それは困ったね」
「と言いながら、近づいてくるんですね。もう今日は行けないって言いましたよね?帰ればいいんじゃないですか」
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