ヒロインが悪役令嬢っぽい

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ヒロインが悪役令嬢っぽい

「わ、あぶなっ…!」 噴水池の縁に座ろうとしたら、イノシシのように鼻息も荒く突進してきたピンク色の髪をした美少女がいたので右に避けた。 ら…その美少女は止まれずに物凄い勢いで噴水池に頭から突っ込んでいった。 避けなければが噴水池に落ちてましたね。 「マリィ!大丈夫かー?!」 と遠くから全速力で走ってきたのは、金髪のステキ(顔only)な王太子セドリック様。 フルネームはセドリック·モルク·ジオハース。 我がジオハース王国王太子。 私、ティーリズ·ピア·アシュトン公爵令嬢の婚約者。 頭から噴水池に突っ込んで二本脚だけ出ているホラー美少女マリィ·マルース男爵令嬢にベタ惚れ中で、マリィ嬢を王太子妃にしようと知恵の無い頭を振り絞っている。 私との婚約を破談にしてから考えろよ、って切実に言いたい! …ピーマン頭であっても王太子様には言えないのがとてつもなく、憎い。 「ティーリズ!キサマ!マリィを噴水池に突き飛ばすなど…性格悪いにもほどがある!優しさ、というものを持ち合わせていないのか?!」 「…勿論ございますが…。噴水池に自ら喜んで突っ込んでいらっしゃったご令嬢には、どういった行動が宜しいのかは存じ上げないのです」 「何を言ってるんだ?!噴水池に頭から突っ込む馬鹿な令嬢がどこにいるんだ?!」 そこにいますよ、そこ。 池に突き刺さっていらっしゃいますでしょ。 セドリック様は普段はスカートに隠されているマリィ嬢の生足をじっくり堪能してから、私の咳払いに慌てて脚を抱えて噴水池からマリィ嬢を引っこ抜いた。 「…あ、セドリック様!私、ティーリズ様に…」 「うん、知ってる。またティーリズに嫌がらせされたんだな?!」 オヨヨ…と泣き真似しやがる、マリィ嬢。 私を突き飛ばそうと画策して失敗して自ら突っ込んだくせに、私のせいにするんじゃない。 それに言い争ってる場合じゃないでしょ。 だって… ビュ~ 「クシュン!さむ…」 「だ、大丈夫か?!マリィ!…ティーリズ!後で処分を言い渡すから覚えとけ!!!さ、マリィ。早く体を温めないと風邪を引くよ」 セドリック様はマリィ嬢を抱えて去っていった。 処分ってなによ? 私は悪いことしてないんだけど? 「…アレが半分でも血が繋がっているのかと思うと、物凄く嫌だな」 噴水池の脇にある木の頭上から声がして人がフワリと降りてきた。 セドリック様が金髪碧眼の美男子ならば、こちらは銀髪青眼の美男子。 セドリック様に良く似た顔立ち。 まぁ? 父親が一緒なら、似てても不思議じゃないけど。 「…ったく。ルクレーセ伯爵家の教育って、どうなってんだよ?孫息子の王太子様、頭の中に(ぬか)詰まってね?」 「糠が詰まってるならまだ良いじゃない。私は種無しピーマンだと思ってるわよ?ところで…ラド?あなた、いつから木の上にいたのよ?」 「ん?ず~~~っといたけど?だってリズを待ってたんだからさ。いい加減ブチキレて王太子様を連続ビンタして、王太子妃候補辞めろよ」 「…連続ビンタなんかした日にはピーマン、もといセドリック王太子が煩いじゃないの!しかもルクレーセのジジイ…ゴホッ!伯爵がヤバイでしょ」 「そぉお?やっぱり俺が直々にルクレーセのジジイとやりあった方が良い?」 「それはヤメテ。ステラース侯爵とルクレーセ伯爵のガチンコバトルになるじゃないの。…まぁ、そのうちピーマン頭とイノシシ娘がなにやらやらかしてくれるわよ。それまで放っとく。…後、ラド。あなた変に能力見せるとセドリック様差し置いて、あっという間に王太子に祭り上げられるわよ?気を付けてよ?」 「え~?リズが合法的に手に入るなら、それもだと思ってるけど?」 「…私、王妃みたいなガンジガラメの生活はパスよ。…ラドが王になるなら、として盛り立ててあげるわ」 「…じゃあおとなしくしてるけど…俺はそんなに我慢強くないの、解ってるよね?」 そして私の頬にキスをして、手をヒラヒラ振って校舎方面に去っていった。 彼の名はラドルーク·シルク·ジオハース。 このジオハース王国の第二王子で私の幼なじみ。 第二王子といっても王太子セドリックと僅か二時間しか年の差はない。 ジオハースの王ケルオン陛下は即位前から困っていたそうだ。 というのもジオハース王国二大勢ステラース侯爵家とルクレーセ伯爵家のご令嬢をごり押しされて、どっちかを選べば内乱が発生しそうだったとか。 なので両家の令嬢を同時に貰ったとか。 で、お世継ぎ戦争も勃発して、ほぼ同時にご懐妊させたらしい。 ご懐妊の報告がほぼ同時で、両家の板挟みで胃痛を起こしていた陛下は嬉し泣きしたそうだ。 しかし産まれた王子二人は陛下に似て容姿は良かったものの…頭の中身は雲泥の差だった。 或いは月とスッポン。 勿論雲と月はラドルーク王子の方。 小さい頃はお爺様の友人であったステラース侯爵の家にお爺様と一緒に遊びに行くと、ラドがいて一緒に遊んでた。 で、言われたのよ。 『大きくなったら、リズをお嫁さんに貰うの!』 ステラース侯爵は大喜びだったわよ。 だってアシュトン公爵(うち)がステラース侯爵に付けば、王公貴族を完全に掌握できるもの。 だけどそう考えたのはルクレーセ伯爵も同じだった。 こちらは陛下に直談判をして、私をセドリック王子の嫁に推挙してしまった。 で、ラドの気持ちを知らずセドリック王子の嫁候補と認めてしまったのだった。 次の日、顔中(体もだったらしい)痣だらけの陛下がセドリック王子との結婚を撤回しようとしたけど遅かったらしい。 ルクレーセ伯爵の根回しは素早く、国中に セドリック王子婚約&王太子擁立! でお祝いムードで半泣きで怯えながらラドを伺う陛下と、王太子と呼ばれたセドリック王子とルクレーセ伯爵のふんぞり返り様と、能面で陛下を睨むラド&ステラース侯爵&アシュトン公爵(私の父親)。 お父様は私を可愛がってくれていたから自由恋愛推奨派だった。 お母様はさる男爵家の令嬢で、艱難辛苦を乗り越え結ばれたんだそうで 『夫はお前が自分で決めなさい』 と常々言ってたのに陛下のせいで全て水の泡。 怒りがいや増して憎悪してた。 私と王子たちが10歳にも満たない頃のことでも、昨日のように思い出せるできごとだ。 何故ならば…国は一応落ち着いたけど陛下はゲッソリ痩せこけたから。 事あるごとにセドリック王太子様とラドがやり合い、ケッチョンケチョンにセドリック王太子を叩きのめす。 それは陛下にも同様で、胃薬が手放せなくなったんだとか。
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