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…………ビューーーーーッッッ!!! 身を切り裂くような凍てついた風が、少年が暖を取っている小さな洞穴にまで流れ込む。 「……うぅっ…。寒い。寒いよ………。」  携帯用のガスバーナーがチリチリと微かに音を立てる。小型の鍋の中で何かの肉がグツグツと煮えている。 「………ううっ!!」鍋からはなんとも言えない香しい匂いが漂ってくる。 「………。…神様、父さん、母さん………。 …お許しください。」 誰にともなく少年は呟くと、小鍋で煮えている 肉をフォークで突き刺しゴクリ、と一度唾を飲み込むと目を閉じてゆっくりと肉を噛みちぎり咀嚼し始めた。 ……高度3000mのこんな小さな分かりにくい洞穴では救助も期待できないかもしれない。 それでも少年は何とか生き延びる為に肉を口に運び、咀嚼し続ける。 ………これは一体なんの肉なんだろう? 寒さと飢えで意識が朦朧としている少年にはそれすらよく分からなくなってくる。 ……そうして鍋の中の肉を全て平らげ、少年は自分の寝袋へと這ってゆく。 ……やがて少年は深い眠りへと落ちて行った。 「………ザ、ザザァーーー!!」 ……何処かで、微かな音が聞こえる。 「………ザ、ザァーーー!!聞こえますか?こちら山岳救助隊!聞こえますか?どうぞ!」 ……山岳救助隊だって?バッと身を起こし音を発している無線連絡機を少年が手に取る。 「こちらメイ!!聞こえています!助けて下さい!!どうぞ!!」声を張り上げて懸命に少年は応答した。………しかし。 「………ピィーーーーー!!ガ、ガァーーーーーーッッ!!!ブツン!!!」 最後に一際大きな音を立てて、それきり無線機は沈黙してしまった。 「…チックショウッッ!!」 声を荒げて少年は地面に拳を叩き込んだ。 ……何ということだろう。千載一遇のチャンスだったのに。思わず少年の目に涙が浮かぶ。 …ズッ、ズッ、ズッ…。 ………?今、何かが動く音がしなかっただろうか? この場所にはもう僕以外誰もいないはずなのに………。 ………ズッ、ズッ、ズッ…。 「ア、アァッッ……!!」 ……そんな馬鹿な…。皆死んだ筈だ。ちゃんと脈も呼吸も確認した。…なのに……。 「……ア。ア。ア……。」 僕の背後に誰かいる。呻き声と荒々しくも弱々しい呼吸を繰り返しながら。 「……ア。ア。ア…。……ア。ア。ア…。」 …少年は寒さと恐怖で失神してしまった…。 ……バラバラバラ。…バラバラバラバラ。 何かモーターのような唸りが聞こえて少年は目を覚ました。 「…気が付きました!!」すぐ横にいた救助隊員が他のメンバーに声をかける。 「大丈夫かい?君は助かったんだ!もう心配要らない!すぐに病院まで連れていってあげるからね!!」 ………何ということだろう!完全に希望は絶たれた、と思ったのに。僕は助かったの? やがて病院のヘリポートに救助隊のヘリは到着し、救助隊員達が少年の乗ったキャスターを外へと運び出したーーーー。 ……………………………………。 ………………。 ……。 …………チリチリチリ。……パチッ!! …………チリチリチリ。……パチッ! 小さな洞穴の中に寝袋に入った死体が三体。 その横で先程の少年がカッと目を見開いて絶命していた。…………そして、少年の腹部を何かが食い破って………。
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