血管の異変

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 うだるような暑さの中、ゆっくりと目を開くと、僕の左手の小さな血管がピクピクと動いていた。  それは心音に連動するように規則的に波打ち、何だか面白く思える。まさに人体の神秘だと思いながら額の汗を拭った。  額のびっしょりとした汗が右手の甲に付き、体のシャツも張り付いている。後でシャワーでも浴びようか。しかし、この血管ぴくぴくはおもしろいからもう少し観察したい。  おや、左手の血管のぴくぴくが少し広がった。今までは親指の側の小さな血管だけが動いていたのだが、近くにある人差し指につながる血管までピクピクと動き出した。ピクピクの連動は移るのか。これはおもしろい。  クスっと笑っていた直後、僕の左にある別の血管もピクピクと動き出した。手の甲から薬指につながる血管だ。それらは浮き上がるように僕の目の前に姿を見せ、他の血管と共にピクピク…というよりビクンビクンと脈打つ。僕は「何だこれ!?」と声を上げていた。
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