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異変はそれだけに留まらなかった。中指に走った血管、手の甲から手首に伸びた血管。前腕を走る血管が相次いで膨張して激しく脈打っている。思わず心の中で叫んだ。待ってくれ、こんなことが起こるのか!?
起き上がろうとしたが、体中が縛られたかのように言うことを聞かなかった。
僕はこれは悪夢に違いないと思った。それもとても質の悪いヤツだ。夢なら醒めろ。醒めてくれ!
血管たちはそんな僕の想いに逆らうかのように、脈打ちを続けていた。左手だけでなく右手中の血管まで脈打ち、皮膚の毛穴という毛穴からたっぷりと汗がにじみ出てくる。
息も荒く、呼吸もままならない中、必死に体を動かすと、なんとか僕は体を横倒しにすることができた。そこには真っ黒なテレビのディスプレイがあり、僕の顔が映っていた。
僕の顔中の血管まで、ドクンドクンと脈打っている。その姿はもはや人間ではないかのように思えた。
もうだめだ、このままじゃおしまいだ。僕は必死に手を伸ばし、スマートフォンに指をかけた。
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