662人が本棚に入れています
本棚に追加
/185ページ
ことに、男女関係においての趣味趣向は清夏が一番変わっている 。
「誉田くんより、日野くんの方が好き」なんて言うのだから。清夏の『好き』は恋ではなく誉田くんよりマシという意味で使われている。だけど、それでいい。ライバルは少ないに越したことはないからだ。
「イケメンはイケメンだよね」色恋には疎そうで興味がなさそうな聡子でさえ、こう言うのだ。
イケメンなんてもんじゃない。イケメンを過ぎるイケメンだ。その誉田くんにときめかないなんて、清夏は変わってる。
「おっはよーん! 女子のみなさん! 」
そう言って、ここに入ってきたのは、誉田くんと真逆の男、清夏が誉田くんよりマシだと言った日野陽太。
せっかくなので四字熟語で表すとしよう。
「饒舌多弁」「単純明快」「馬鹿正直」
口々に言ってみる。
「え、何それ、事実無根」不服そうに言うものの、へらへら笑っている。
「いや事実でしょ」一瞥して言い放つ
「俺、熟語苦手~」
「熟語だけじゃないでしょ」
「英語は?」
「得意!」
「何か言ってみ!」
「Dental clinic!」
物凄くかっこつけて発音した“歯医者”にため息が出る。
「……馬鹿だ」
「あ、熟語もいっこ知ってる。これはどう? 酪農牛乳!」
手に持った牛乳パックの文字……
もう一度全員で床がもわーっとするような、深い深いため息を吐いた。
これのがマシなんて、清夏は本当に変わってる。
最初のコメントを投稿しよう!