6人が本棚に入れています
本棚に追加
★
夕暮れ時だというのに、昼のような暑さが残っている。
ひぐらしの鳴く声も、掻き消す人の声。
道路は規制され、普段なら車が行き交う道も、人でごった返しとなっている。
毎年の事だが、祭りはとても賑わっていた。
普段は何も面白味の無い田舎だが、夏に開催されるこの大規模な祭りだけは、地元の人間だけではなく、他県からの人間もやって来る程だった。
だが、浴衣を着ている者は少ない。人が多く、場所も広いため、地元の人間や大人達は動きやすさ重視の服装である。せいぜい、友達連れやカップル等子供ぐらいしか着飾りはしないが、今時着物や浴衣の着付が出来る若者等なかなかいないのかもしれない。
その為か、元からの見た目のせいか、道行く人の目を惹く2人。
「人がゴミのようにうじゃうじゃいるわ。」
祭りの会場で、開口一番に紗知はぼやく。
人の多い場所が嫌いだった。すれ違う人間達を見るなり、眉間に皺が出来る。
青年も似たようなもので、来たばかりだというのに、辛気臭い顔をしていた。
「やめろ。俺らがゴミに囲まれてんのとか、想像したくねぇ。ま、俺以外の人間なんて、虫ケラ以下だろうがな。」
「はい出た中2病発言ー。俺以外は虫ケラとか、俺様過ぎて引くわー。何様なんだか、このいいとこのボンボンは。高学歴だけが偉いと思うなよこの教育学部め。」
最初のコメントを投稿しよう!