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「・・・あんたって、ギャップ萌えでも狙ってるの?」
「は?暑さで頭やられてんのかお前。」
「頭やられてんの、そっちだろ。」
「うっせぇ女だな。黙って食ってろ。」
大きい一口で、あっという間にクレープからはみ出ているチョコケーキを、食べきってしまった。
見ているだけで、胸焼けしてしまいそうだ。
まさか、こんなに甘党だったとは。
紗知は自分のクレープを口に含んだ。
眉を寄せる程、甘ったるくて、苦手だった。
★
それから1時間弱は、出店を見て回り、気になったところに寄って遊んだ。全てアキが支払いを済ませ、紗知も慣れた事のように奢られている。男の方が尻に敷かれているかのようにも見えるが、実際は主導権はアキが握っていた。
そろそろ花火見たさに、皆が広場に移動しようという時。
アキは逆方向に、紗知を引っ張って行った。
どこに行くのだろうと、気になって黙ってはいたのだが、人気のない場所まで来たところで、紗知はやっと抗議の声を上げた。
「…ちょっと?祭りの会場から、外れちゃうじゃない。」
「黙って着いてこい。」
もうすぐ花火が上がるというのに。何がしたいのだろうか、この男は。
やはりいつまでたっても、考えが読めないと言うか・・・。
そもそも、怖がりで甘党だった事も、さっき知ったばかりだ。
一体これ以上何をして、驚かせてくると言うのか。
草の生い茂る道を抜け、神社の境内を抜けた。
ここまで来ると、人の姿どころか、明かりさえ存在しない。
「ねぇ、もう戻り・・・」
「見えたぞ。」
「え・・・?」
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