幻滅の夏祭り

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アキの言った先に、仄かな明かりが見える。 こんな所にまで、屋台があったのだろうか。 わからないまま、アキに引っ張られ、光に近づく。屋台でも、提灯の光でもない。優しいオレンジ色の光だ。それが、いくつも目の前に存在していた。 「思ったよりは、綺麗なんじゃねぇか。」 上から目線の感想。アキが紗知を前に押し出すと、彼女の瞳も表情もぱっと輝いた。 目の前に広がるのは、いくつもの竹。その切り口の中から溢れる橙色の光。夜の闇に広がる竹あかりは、幻想的で美しい光景だった。その中を、2人はゆったりと歩いていく。優しい光に包み込まれているような、ほっとする美しさ。一体何本の竹が、ここには存在するのだろうか。 紗知はこんな場所が、祭りにあった等聞いた事がなかった。 どういう事なのだろうか。 綺麗な事に代わりはないが、もっと派手なものを好むアキらしくないのではないか。 視線だけで問いかける。 「今年から、祭りの日にライトアップする事になったって聞いてな。・・・お前が好きそうだろ。」 最後の方は、小さい声で言われたが、紗知の耳には届いていた。 普段からそっけなかったこの男が、こんなサプライズを用意してくれるなんて。ここに着くまでも、驚かされる事ばかりだったが、呆れはしたが嫌いではないし、そんな一面に好感を持てた。 ずるくはないだろうか。 普段はあんなにドライな男が、1度優しい姿を見せただけで、かっこよく見えてしまうというのは。 自然と、紗知は答えていた。 「うん・・・好きよ。」 「は、だろうな。」 「ライトアップも、あんたもね。」 「・・・は?」 「あんたが好きよ。」
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