6人が本棚に入れています
本棚に追加
アキの言った先に、仄かな明かりが見える。
こんな所にまで、屋台があったのだろうか。
わからないまま、アキに引っ張られ、光に近づく。屋台でも、提灯の光でもない。優しいオレンジ色の光だ。それが、いくつも目の前に存在していた。
「思ったよりは、綺麗なんじゃねぇか。」
上から目線の感想。アキが紗知を前に押し出すと、彼女の瞳も表情もぱっと輝いた。
目の前に広がるのは、いくつもの竹。その切り口の中から溢れる橙色の光。夜の闇に広がる竹あかりは、幻想的で美しい光景だった。その中を、2人はゆったりと歩いていく。優しい光に包み込まれているような、ほっとする美しさ。一体何本の竹が、ここには存在するのだろうか。
紗知はこんな場所が、祭りにあった等聞いた事がなかった。
どういう事なのだろうか。
綺麗な事に代わりはないが、もっと派手なものを好むアキらしくないのではないか。
視線だけで問いかける。
「今年から、祭りの日にライトアップする事になったって聞いてな。・・・お前が好きそうだろ。」
最後の方は、小さい声で言われたが、紗知の耳には届いていた。
普段からそっけなかったこの男が、こんなサプライズを用意してくれるなんて。ここに着くまでも、驚かされる事ばかりだったが、呆れはしたが嫌いではないし、そんな一面に好感を持てた。
ずるくはないだろうか。
普段はあんなにドライな男が、1度優しい姿を見せただけで、かっこよく見えてしまうというのは。
自然と、紗知は答えていた。
「うん・・・好きよ。」
「は、だろうな。」
「ライトアップも、あんたもね。」
「・・・は?」
「あんたが好きよ。」
最初のコメントを投稿しよう!