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「おい、祭り行くぞ。」
ドアを蹴って開けた青年の目の前には、勉強机で読書をする少女の姿があった。
大好きな静寂の時間を邪魔した乱暴者に対し、冷たい視線を投げて返すが、直ぐ様発された内容について疑問を口にする。
「祭りって…あんた、祭りとか嫌いじゃなかった?」
「あ?嫌いだが。」
「・・・じゃあ何で行くのよ。わざわざ行く必要ないでしょ。」
「ごたごたうるせぇ。ほれ、これ着ろ。」
青年は少女に布のようなものを投げて寄越した。
しぶしぶ少女はそれを広げて確認する。
濃緑に、大輪の白い花が咲いた浴衣。黄色い帯からは、白い花を模した簪が包まっていた。
「・・・ま、悪くはないけど。」
「は、偉そうに。着方はわかんだろ。俺も着替えるから、早く支度しろ。」
「はいはい。」
少女はドアをバタンと閉める。やや乱暴に閉めた事が、せめてもの反抗だった。
何を言っても青年が考えを、返るとは思えない。仕方なく、着替え始めた。
青年も自室に戻り、自らの支度をはじめる。
レジ袋から、買ったばかりの浴衣を取りだし、重いため息を吐く。
「やべぇ・・・俺が着方わからねぇ。」
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