涙のキス

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涙のキス

「この卵全部、人が入ってるの?」 「たぶんあと1つだけ。」  怖いな...とりあえず今日はケイだけで精一杯。 また別の日にしよう。 ケイが後ろからジーって見てる。 料理に集中出来ない...。 「まだ?早く練習したいんだけど...。」 「向こうで待ってて下さい。」 まだやるの?もう心臓が追いつかないんですけど。  ふん、とケイが背中を見せ向こうに歩いて行く。よしっ! 震えた腕を伸ばし... たくましい体を後ろから抱き締める。  やった!出来た! 後ろから見てもケイの耳が赤くなっているのが分かる。 「胸キュンした?」 「うん...可愛い...合格。」 「やったー!」 って何これっ?何の試験? ケイが頭をなでなでしてくれた。 そんなカッコいい顔でなでなではやばいでしょ?また胸がうるさい...。   「智子はもっと自信を持たなきゃ。メガネ外したら可愛いんだから。」 「自信か...。」 「料理も上手だし、優しいし。」 ケイの顔が至近距離に近付き...私の目蓋にそっとキスをする。 きゃあ!そんなの元夫にもされた事ないっ。 ケイだったら私を大事にしてくれるかもしれない...そう思う。これが本当の幸せ? 「はい、これが最後の練習。キス。」 「キス?!」 2人で見つめ合う...時が止まっているかの様。 優しく、甘い空気が流れる...。 私と元夫にもこんなドキドキする瞬間があったのかな? だいぶ前の事だけど...きっと大切な記憶。 でも...そう思っていたのは私だけ。 今さら涙が溢れ出す...。 「男は女の涙にも弱いんだ...。」 ...泣いたら戻ってきてくれたのかな? 目をつぶると涙が頬を伝う。 そのままケイの唇に優しく触れる。 「凄く胸キュンした!健気で可愛い...よしっ、合格だ。」 強く抱き締められる...ケイの脈拍が伝わってくる。こんな私でもドキドキさせる事が出来たの? 「今度は好きな奴を逃がしたらダメだよ。」 3回目のキスで... ケイは私の前から姿を消した。 私は涙が止まらない...。
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