妄想

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妄想

二軍監督(瀧川)「どう思われましたかって俺に訊かれてもだな?・・そりゃ雨には勝てないよ、一軍が使うドームならともかく、二軍の練習試合じゃ、雨が降れば中止になるのは仕方のないことだ!」 内田「瀧川監督?・・何時からこちらにいらっしたんですか?」 瀧川「5分程になるかな? とにかくお前がいつもの妄想プロ野球実況中継を始めたころからだ」 内田「“いつもの”って、俺っていつもそうなんですか?」 瀧川「雨が降ると、野手はベンチだが、投手は球場で唯一、屋根のあるブルペンに雨宿りするよな、しかしお前はいつも最後までブルペンのマウンドをキープしてくれている」 内田「いつもじゃないっす、マウンドが痛んでいる時だけです」 瀧川「・・ならそれでいいがな・・お前がトンボを扱いながらいつも口にしているのが、内田流プロ野球実況中継だ」 内田「監督に聴こえてました? 独り言のつもりだったのに⁉」 瀧川「独り言にしちゃ声がデカい! おまけにガッツポーズまで見せられりゃ、ありゃ普通じゃない!」  そうなんです、これまでのプロ野球実況中継は、アナウンサーや解説者、そして全ての出演者は、私一人で10役演じていたものです。そう、私はもしかして声優を演じているつもりだったのかも知れません。 寝ても一軍、覚めても一軍、そりゃ夢に飽き足らず、妄想の独り言ぐらいは、目をつむってくださいよ⁉
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