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第四話
***
「はぁ、はぁ。しつこいな、あいつら」
「仕方ないよ、はぁっ」
段々と土砂降りになり、二人で組織からまけそうな場所を探す。あっちこっちと動いてもオトナの力がじゃ、とうてい叶わない。
都内である僕だけ捕獲対象になるのだから、やはり諦めて彼女の手を離そうとした。
「だめっ!」
彼女の方から僕の手を再び取る。さっきよりも強めに握り締められた。
天気の悪さや走り続けた結果、心身ともにボロボロなはずなのにーーー
「私と一緒に逃げるの」
「えっ?」
「分かったなら返事っ!」
「はいっ!」
初めて彼女の懐の深さを知った。
僕は、新たな彼女を見ることが出来て嬉しい。驚くのもつかの間、元気よく返事をした。
刑事組織に捕まってしまう前に、二人で逃げ惑う。
二人の鼓動の波形が乱れる前にーーー
END
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