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おはようを言うこともなく教室に入り、まわりを見わたしてみて「あれ?」と思う。
感じが違う。
二年の三学期から定位置だったあたしの席に、男子が座っている。教壇すぐの席。つまり一番まえの席だ。
けほけほと咳をしながら、もう一度まわりを見わたしてみる。
オハヨウ! と手をふりつつ近づいてきたのは仲のいいチカコだ。
長い髪が胸元にたれて揺れている。白のブラウスに紺色のカーディガン。チカコのカーディガンには結構、毛玉ができている。ひとのことは言えないけれど。
「綾子熱けっこう出たんだってぇ? 三年にあがったばっかなのに、災難じゃん。もう大丈夫?」
「あー、熱はさがったんだけど。まだ咳がでちゃって」
それより。
「ねえ、あたし休んでる間に席がえ、した?」
「見ればわかるじゃん」
あっけらかんとチカコ。
「えー。なんで人が休んでる時に席がえなんかすんのさあ。誰よ、言い出しっぺはあ」
「いや近藤が。一応変えるかあ?って」
近藤。去年と同じ担任だ。
「席がえするなら、新学期はじまったその日にやれよって感じ! なあんかうちの担任って中途ハンパ」
だけど。
学校を休んだ時にクラスの役員を決めていて、勝手にやっかいな委員にさせられるのに比べたら、ましか。
「でも綾子、いい席だよ」
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