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「は?」
いい席。
「そういやあたしの席どこ」
「あそこ」
チカコが振り返って窓がわを指差した。
後ろのほう。机の上にあぐらをかいて座り、男子たちに囲まれて談笑している顔を見てどきりとする。
ワックスかなにかをつけてツンと立たせている髪の毛。窓からはいりこんでくる陽に照らされてもそれは真っ黒なまま。ヘアスタイルが「雨上がり決死隊」の宮迫博之に似ていて、クラスの女子の間でミヤサコと呼ばれている男子。
「ミヤサコのとなりの席。窓に近くて、しかも後ろだよ? よかったじゃん。だっていままで綾子、いちばん前の席だったじゃん」
チカコがのん気に言うのを、から笑いで返した。
何も知らないからチカコはそんなことが言えるのだ。
何も知らないから。
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