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しゃべりまくる男
死に至る病ってなんだか知ってる?
違う違う、そういうんじゃなくて。
ああそういえば最近じゃエイズって治るらしいね。
ええ? 知らないよ僕医者じゃないもの。
あれ、もしかして僕医者に見えちゃった?
わけないか!
っていうかひどいねえ、僕そんなにバカっぽく見えるのー?
まあいいやそんでさ。
死に至る病って絶望なんだって。キルケゴール。
ええっとたしか、デンマーク人……だったかな?
あれオランダだっけ、どうだっけ。
あはは、ひどーい。自分だって知らないくせに。
まあいいじゃない国籍なんてどうだって。
大事なのは、中身でしょ?
僕だってもちろん歴史に名を残した偉い哲学者のセンセに喧嘩を売る気なんてさらさらないんだけどさ、でもそれって違うんじゃないかなあって思うわけ。
死に至る病って言ったらそれは絶対に退屈だよ。
少なくとも僕にとっては、ね。
だって正直、絶望したって死ぬ気がしないけど、退屈して退屈して退屈しきったら、内側から爆発して死んじゃいそうな気がするもん。
え? 今ここで?
爆発してみせるの?
いやあ無理無理。
だってこれから退屈とはほど遠い話をしてあげるんだから。
ここ数日の僕の身に起きた話。
違うって。作り話じゃないよ。
正真正銘の実話百パーセント。
保障するって、この僕が。
ほら見てこれ。これなんだと思う?
そう、箱。
でもただの箱じゃないよもちろん。
ああ大丈夫、触っても爆発しないから。
振ってみてよ。
カラカラカラ、って音がすると思うんだけど。
そう、その音!
これ、一体なんだと思う?
実はこの箱がお話のキモなんだ。
これがここにあるってことは今から話すこの話が本当にあったことだってこと、君なら理解してくれるよね。
オーケー。前置きはほどほどにしておこう。
なんだっけほら、昔から言うんでしょ?
スピーチとスカートは……。
ああちょっと待ってよ、ちゃんと話すから。
もう始めるって、ねえちょっと待って! ねえってば!
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