story02・こんなんだから男ができない

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「結局、男は可愛い子が好きなんだよね」 「可愛い子?」  岸田がきょとんとする。 「いや、顔もそうなんだけど、顔だけじゃなくさ。こう、ちょっと、ほっとけないような子? そういう可愛らしさがいいんだろうな、って思ってさ」  あたしには、そういうのはない。可愛げがない。  隣からうーんと唸る声がした。見ると岸田は首をかしげていた。かしげて、ワックスで整えた髪を右手でぐしゃぐしゃにしていた。そして大きく息をはく。  柿崎、と呼ばれた。 「ん?」  やはりあたしはガリガリとコーンを食べていた。内側にコーティングされているチョコレートがまたおいしい。あと10センチくらいしかないのが残念。  残りをもぐもぐやっているところで、岸田が意を決したように聞いてきた。 「お前いま好きなやつ、いる?」 「ファ?」  は? と言ったつもりだったのに。コーンやらチョコレートやらが口にあって、うまく発音できない。  岸田がふざけのない表情であたしを見ている。  何ごとかと思いつつ、とりあえず首を振った。口の中のものを飲みこむ。 「いや、いない」  ギンガムチェックのシャツが一瞬頭をかすめたけれど、ひとまずこう言っておこう。  いない。  とたんに岸田がほっとした表情をみせる。そっかあ。とつぶやいて、また髪をぐしゃぐしゃやっている。  もう一度深呼吸して、顔をあげて。少し赤い目をしてあたしを覗きこんでくる。 「したらさ」  俺とつきあわん?
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