story01・木曜日の恒例

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 そうだよ。とうなずいた。  岸田は知っている。荒木があたしに代返を頼むたび、何かおごってくれることを。生物のある木曜は、決まって食堂のスペシャルカレーだということも。  もともと荒木と岸田は高校からの親友だった。いまはそれにあたしが加わって、つるんでいる感じ。  男とつるむのは変かと思ったのははじめだけだった。大学となれば、そんなの誰も気にしない。  ただ、一部の女子からあたしは反感をかっているかも知れない。  岸田のせいだ。  顔よし、スタイルよし、頭よし、センスよし。性格もよしで優しい。こんな何拍子もそろった男を、まわりの女子が放っておくはずがない。だからあたしはたまに、それらしき女子に睨まれることがある。  まあそんなの、何てことないのだけれど。 「はい、荒木どけて」  ひたすらノートを写していた荒木が、隣の椅子に行けとうながされている。荒木は面倒そうにしていたが結局移動した。ノートや筆記具が横にずらされ、そこには定食ののったトレイが置かれる。  今度は岸田があたしの向かい。 「荒木おっまえ、たまには柿崎のリクエスト聞いてやれよ。隣の喫茶店でパスタとかグラタンとか食べたいんじゃないの? 女の子なんだから」 「大丈夫だって柿崎は。いっつも豪快に食ってくれるもん。大好きなんだよスペシャルカレーが」 「こんなこと言われちゃってるよ柿崎、いいの」  岸田が困ったようにあたしを見る。苦笑いした時にできた、えくぼがキュート。いやほんと、目の保養。 「いいんです。どうせあたし大好きですから。スペシャルカレーが」 「ほらな」  荒木の、それみろ。といった態度。 「お前なー」  岸田が呆れたように笑っている。  優しいなあ。荒木はいつもこんなんだけれど岸田はちがう。あたしを普通に女の子として扱ってくれる。
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