story02・こんなんだから男ができない

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 駅のホームにあるようなプラスチックの椅子に腰をおろす。食堂にも生協にも近いこの場所では、学生の往来がひっきりなしだ。  コーナーに、グレイの公衆電話が一台置いてある。この携帯電話の時代、使うひとはめったにいないだろうに。  ジャイアントコーンの包装紙をぺりりとめくる。チョコナッツ味。  あんだけ食べてアイスも食べるんだ。と岸田にからかわれて苦笑い。それでも赤い包装紙をめくっていく。  バニラアイスのうえのチョコレートが見えてきた。こまかなナッツも。  岸田はカフェラテと記されたコーヒーを持っていた。北海道の地形がでかでかとプリントされてある缶。 「あのふたり、別れても普通に仲いいよな」  カシュッという金属音。岸田が、プルトップをあけてごくごくと飲んでいる。  話の振りが突然でも、荒木と笹井さんのことを言っているのはすぐわかった。  そうだよね。と同意してからあたしはチョコレートの部分をかじった。 「俺、別れてから友達になるなんてできんなあ。高校の時の彼女とも、もうなんも連絡とってない。切れちゃってる」 「……あー。そういうもん」  そう返すしかなかった。なぜならあたしは誰ともつきあったことがない。  だから、別れたあとの気持ちなんて理解できない。 「案外あのふたり、ヨリ戻したりして」  何でもないことのように岸田が言った。  あたしはかろうじてうーん、とだけ声をのこす。ひたすらジャイアントコーンをかじる。  チョコレートにばらまかれたナッツも。  こまかなナッツがごりごりと口の中で痛い。飲みこむと、喉の奥も痛かった。  すごく甘いのに。 「いいよなあ。岸田も荒木も。高校の時は彼女いて楽しんでたってわけか。青春だなあ」  話題をそらしたかった。わざと軽口をたたき、ハハっと笑ってまたアイスをかじる。  もうチョコレートもナッツもなくなってしまった。コーンのうえにはバニラアイスだけ。 「なに、柿崎はマジで彼氏いなかったわけ?」 「だーかーらー。いままでも何回も言ってるじゃん! いなかったって。っていうか生まれてから一度もそんな存在おりませんでしたから!」 「まったあー」  隣から、鼻で笑う音。  けれどそれはあざけるものではなく、優しい笑い方だった。 「柿崎、すごい可愛いのにな。ちょっと見とれちゃうくらい」  
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