story02・こんなんだから男ができない

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 それ、ほんとかよ。  じとりと岸田をにらんだら、にこにこしていたので調子が狂う。  きれいな顔だちをしているのに親しみがもてるのは、たれ目のせい。笑うとさらにそこへ皺が寄り、口元にはえくぼが浮かぶ。  そんな顔で 「マジにそう思うよ、俺」  なんて言ってくるものだから憎めない。気が緩んでつい笑ってしまった。 「ありがとね。そう言ってくれるのは岸田だけさっ。みーんなあたしのこと男オンナだとかガサツだとか、そんなんばっかだから。荒木みたいにさっ。ま、実際そうなんだけど」 「なーにを。んなこと言ってるけど、誰かに告られたことくらいあるしょ? 柿崎ほうっておく男いないだろし」  なぜに今日の岸田はあたしを持ち上げるのだろう。でも悪い気はしない。  もしゃもしゃとジャイアントコーンを食べながらうなずく。 「まぁ……あるにはあったけど、違うクラスの話したことない男子とか、他の学校の男子とかだし。知らないひとにつきあってなんて言われてもさ。困るよね」 「そうかあ? そういうもんかな? 俺はフツーに嬉しいけどね。告られたら」  岸田が缶に口をつけていた。カフェラテと記された缶はまさにそれっぽい色をしていた。ミルクがたっぷり入っていそうなベージュ色。  岸田が、缶から唇を離した。 「つかさ。ただ単に、その時柿崎に好きなやついたからでしょ? だから告られても困るだけだったと」  するどい。  図星をつかれて笑うしかなかった。 「まあ、実はそうなんだけど。でも本命はいつもダメだったんだよね。向こうにもう相手いたりして」 「自分から告ったりは?」 「やー、ないない。てか告る前から失恋しちゃってるパターンばっか。なんもしないで終わりなんだよね。高校の時の好きなひとにはさ、あたしが一番仲良くしてる子のことが好きって相談されちゃって。席替えの時、番号クジ交換してやったこともあったなあ。その子の隣の席になれるようにさ。おかげでふたり、めでたくつきあいだして」 「かいがいしいな」 「そんなこともあったねー。ま、いまとなれば懐かしい思い出ですけどね」  あたしはガリッとコーンをかんだ。コーンにのっていたバニラアイスは、すでにない。  ガサツだわ、食べるのは早いわ。  こんなんだから男ができない。本命もふりむかない。
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