闇夜≪朔≫

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薄氷を踏む様な日が続いた。 真一の機嫌を伺う日々。 そんなある日、週末限定の産直再開のチラシが入った。風水害の被害で、まとまった野菜が収穫出来ず一時中止になっていた行事だ。 安価で珍しい野菜もある。 気分転換にパアッと買い込むか。 通常の仕入れもあるので、真一に伝えると 「今週末?良いね、珍しい野菜購入してきてよ。曜子一人で平気?」 ん? 真一の機嫌が良い、笑顔だ。 ストレス発散に一人で行きたかった位だから平気だが、暦上は秋になった。 全く真一心と秋の空だ。 産直の場所は、家からB 町方面に自転車で15分位行ったところ。 野菜を選んでいると、後ろの陳列棚にいる女性2人が話す内容が気になった。 「うちの旦那さ~偏食で本当やんなる」 「気にして作るの面倒くさいよね」 「そう。子供の手前、好き嫌いなく食べて欲しいし」 「だよね」 「全く!味覚がお子ちゃまから成長してないんだよ!」 「あははは~そう言えば旦那さん、年下だっけ?」 「うん、4歳下」 私は不自然にならない様に、話が聞こえる範囲に移動する。 「へえ。ジェネレーションギャップとか感じる?」 「それはないけど、ご機嫌伺いが疲れる」 「スネちゃうって事?」 「うん。食事の事もそうだけど、うっかり気に入らない事をやると、ママはパパの事気にしてないんだねってウザい」 「色々面倒だね~」 「旦那さん、年上だっけ?」 「そう。ま、年上でも男はいくつになっても子供っぽいけどね」 「『だよね!』」 2人がハモる。 年下の真一を子供っぽいと感じた事はないが、頑なだと思う事はある。 長男として家族に対する態度。 料理の事ばかりを追及する姿勢。 まともにセックスが出来なかった時の項垂れ具合… 一本気というか、こうあるべきという型にハマっている彼。 いつかソレが真一の首を絞める気がする。
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