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産直から帰宅する途中、雨が降ってきた。
急いだのでドシャ降り前に家に入れた。
朝お天気お姉さんが、今日は一日大気の状態が不安定と言ってたっけ。
「ただいま」
「お帰り」
真一のいる台所の横を通り際、買ってきた野菜を置き、洗面所のタオルで頭をふこうとしたら、
「濡れたの?貸して」
タオルを横取りして、私の頭や背中を拭き始めた。
「有難う。でも何か作ってたんじゃないの?」
「大丈夫、もう仕込み終わったから。良いの買えた?」
私の髪についた水滴を優しく拭き取る仕草。
「買えたよ」
朝早く模試に行く双子達を見送ったせいか、生アクビが出る。
「眠い?風邪引かない様に念の為ドライヤーかけよう」
そう言うと洗面所からドライヤーを持ってきて、椅子に座るように促された。
ドライヤーの温かい風と、真一の大きな手が頭皮をマッサージして気持ち良い。
「あ~気持ち良い」
「お客さん、肩も凝ってますね」
おどけた感じで片手で真一が肩を揉む。
「そこ!気持ちイイ~」
私も笑いながら、身を委ねる。
自覚症状はなかったが、最近真一の顔色を伺ってたせいで、首回りがガチガチだった様だ。
ドライヤーを切ったと思ったら、両肩に手を乗せ耳元で
「もっと気持ち良い事してアゲル」
と真一が 囁いた。
キス程度は有っても、この家で身体を繋げた事は無い。
思春期の子達が同居してたのと、彼の仕事場だったからだ。
その辺を弁えて、真一も私も「ホテルで」が暗黙の了解になっていた。
だから寝室でキスしながら、下着姿にされた時はビックリした。
「するの?」
「うん。駄目?」
切望した瞳で見つめてくる。
「駄目じゃないけど…」
そんな目で乞われたら、否とは言えない。
「そうだ。今回は、曜子がコレ着けて」
イヤフォンを渡された。
「目隠しと両方だけど、俺が外すまで取っちゃ駄目だよ」
「必要?もう要らないんじゃない」
私が訝しげに目隠しを摘まむと
「必要。あるから最後まで出来たんだよ」
確固たる口調で断言された。
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