闇夜≪朔≫

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恐る恐るイヤフォンを着けると、本当に何も聞こえない。 「怖い」 サッと外すと、アイマスクを私に着けようとしてた真一が 「大丈夫。俺が見守っててあげるから」 と、壮絶な笑顔と決意を込めた声で見つめてきた。 優しい蕩ける様なキスが降り注ぐ。 目隠しをされる前に、沢山真一を見ておこう。 そう思って、瞼を閉じないでキスに応える私に、クスリと笑いながらイヤフォンを装着する真一。 無音。 さっきまで聞こえていた雨樋を伝う水音も。 私と真一の荒い息も。 ただ音の無い世界で交わされる口づけが、体内に響く。 目尻を下げ優しく微笑みながら、私の身体中に唇を這わせている真一を眺めながら、自然に目を閉じた。 その感覚を堪能する。 暫くしてアイマスクをつけられ、ベッドに横倒された。 真一の髪に指をくぐらせ、彼をもっと引き寄せようとする私を啄む口づけで宥める。 更に真一の指先が体を撫で回る。 視覚聴覚が遮断されたまま受ける、その触れるか否かの微妙な触覚は、研ぎ澄まされた私を苛む。 優しいサディスト そんな言葉が思いついた。 奇しくも今まで這い回っていた無骨な指の感触が無くなった。キスもない。 いくら待ってても来ない。 放置プレイ? 年甲斐もなく泣きそうになった。 真一の気配があった時は怖くなかった無音が、無性に怖い。 エアコンの風と相まって震えが走る。 いつまで、このまま? アイマスクもイヤフォンも外してしまいたい。 その時、肩に手が置かれた。 「真一これ取って、やっぱり凄く怖い」 イヤフォンを指差しながら、真一がいるだろう方を見上げる。 程なくしてイヤフォンが外れた。 「あ~怖かった。ブラックホールの中にいるみたいだった」 安堵して深呼吸しながら、そう言うと 「ふっ」 と明るい明るい声 「笑ったわね!?」 あまりにも腹が立ち、アイマスクに手をかけた。真一が慌てて私の手を掴む。 情熱的な口づけで怒りを封じ込められる。 せわしない衣擦れの音がしたと思ったら、私の下着が脱がされた。 真一の熱いカラダが密着する。 素肌で抱き締められ、抱き返す。 エアコンで冷えた体に心地好い温もり。
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