闇夜≪朔≫

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頭から思いっきりシャワーを浴びる。 身体の至るところを洗う。 肌に染み付いた2人の男の、ねっとりとした視線を流し落としたい。 兄弟して何だと思ってるの? セックスさえ与えておけば万事OKだと思ってた真一にも、 彼の言いなりになった渉君にも、 そして一番腹立たしいのは、身代わりにも気が付かず快楽を愉しんだ自分自身。 真一の口から出てきた言い訳の数々 『ジョンに盗られたくなかった…』 『愛してるのに出来ないなら、子供だけでも与えたかった』 確かにセックスというスキンシップで、女としての安心感を得たかった。 真一との関係に不安を感じて、ジョンにも相談したが、復縁なんて毛頭考えてなかった。 私が愛してるのは、愛されたいのは真一ただ一人なのに… 自分の弟をあてがうなんて… 口元を押さえ、むせび泣く。 ひと泣きしたら、少し頭が冴えてきた。 もう真一とは居られない。 先の事は分からないが、ここを出よう。 この騒動に関係のない、双子達が帰って来る前に。 風呂場を出てバスタオルに身を包み、寝室に戻った。 私の裸は既に見られてるのだ、恥じる事はない。堂々と彼等の前で着替えた。 ベッドに腰掛け、頭を抱えてる真一に向かい 「どいて」 自分の感情に蓋をする。 彼の足下の空きスペースからスーツケースを取り出して、服を詰め込む。 通帳や保険証券、パスポート等私名義の大事な書類を入れた。 真一が 「どうするの?」 と不安そうな声。 その不安の対象は、私の行く先? それとも自分の事業展開? 鏡台の上に有った化粧道具を手荒に押し込み、閉めた。 スーツケースを引きずり食卓に向かう。 いつもの所に置いてあった普段使いのバックの中に、今後の生活で必要な物を次々と放り込んだ。 後やる事は… 卓上のノート型PCを立ち上げ、真一の為にやった書類仕事の全てをUSBに入れ 「はい、店の経理や諸々入ってるから」 テーブルの上に置いた。 「何処行くんだ?」 真一の声が震えてる。 「もう関係ないでしょ」 ホント、 今更。 「さようなら」 最後に彼の顔に焦点を合わせ、侮蔑を込めた声音で別れの挨拶をした。
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