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「ハル……ようやく会えた」
「朔夜っ……朔夜ぁ……」
「愛してる。ハル、君を愛してるんだ」
「……私も。私も朔夜を愛してるわ」
ようやく触れ合うことの出来た二人だったが、現実はそう簡単ではなかった。
朔夜の身体が突然大きく跳ね、その後ハルは生暖かいものが自分にかかってくるのを感じた。
汚れてはいたが、元は純白だったドレスが紅く染まっていき、染みが段々と広がっていく。
何が起きたのかわからなかったハルはゆっくりとサクラから身体を離す。
ぐったりとしてしまっている朔夜の顔を覗き込んでみた。
口からどす黒い血を流しており、体中についた傷からはとめどなく血が流れ出ている。
蒼くなった顔からは血が不足していることがよく伺われる。
自分ではもう身体を支えることが出来なくなったようで、手に持っていた剣を握ることすら不可能だ。
手をだらりとぶら下げながら朔夜はハルの胸に身体を寄りかけていた。
「い、嫌よ……朔夜……冗談はやめて……」
ハルを救い出すためにサクラへと立ち向かい、やっとの思いで救い出したのだと安心した瞬間に身体が一気に悲鳴を上げたのだ。
立ち向かう以前から限界だったというのに、限度を超えたことをした。
そのため身体はついていくことが出来なくなった。
美しい黒髪は赤黒くなり、口から溢れ続ける血が地面を紅く染めていく。
伏せられた睫毛までもが紅く染まり、血染めとなった朔夜の呼吸はあまりにも浅い。
息絶え絶えの状態となっていた。
ハルは少しでも血を止めようとして、自らのドレスの裾を破いて腕などの傷口に巻いていく。
そしてこれ以上体温を下げないようにと傷に触らないように朔夜の身体を包みこむ。
しかし願いは叶わず、朔夜は瀕死の状態へと陥ってしまった。
深紅の桜の花びらが散る中、ハルは自分の無力さを知り、それでも涙を流すことしか出来ない己に絶望していた。
そんなハルの悲しみに共鳴したサクラは、深紅の花びらを散らせながら薄らと赤みを増させる。
風に花を靡かせて無言で二人を見ていた。
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