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未来を約束した朔夜とサクラ。
しかし納得できていないハルは大きく首を横に振りドレスの裾を握り締めた。
「――っあなたがこの世からいなくなったら、この世はどうなるんですか!? 誰が、見守ってくれるんですか!?」
声を上げながら涙を流すハルは立ち上がると朔夜から離れ、サクラの元へと足をふらつかせながら歩いていく。
面影もなくなったサクラの太い太い幹に触れると、そこに両手を添えて頬をあて静かに涙を流した。
共に時を過ごし、どれだけこのサクラが世界のことを想っているのかを傍で見てきて身に染みて感じてきた。
悪の華だと言われても、サクラは世界の罪を一身に背負った。
世界の罪を背負えば背負うほど、花は紅くなり、サクラの身体を蝕んでいった。
サクラは捨て去れなかったのだ。
かつてサクラを愛し、尊び、笑顔を向けてくれた人々の姿を。
神木として称えられた愛に満ちた世界を忘れられなかった。
戦争が、サクラからすべてを奪った。
あのサクラとしての栄光も、世界が地獄へとたたき落とした。
それでもサクラは罪を受け続けることで、いつかは世界が平和になり、あの懐かしい日々が戻ってくると信じていた。
信じていて、そして現実に気づいたとき、サクラの身体はもうボロボロで、死期が目の前に迫っていた。
そんなサクラの前に現れたハルは、サクラにとってただひとつの希望となっていた。
《ハル、私は君にすべてを託すつもりだ》
「わ、私には……」
《君の優しさを世界に伝えていってくれ。そして悲しみを減らしてもらいたい。人の心に光がさせばきっと皆動いてくれる。戦争も、終わりを迎えてくれるだろう。
すべてを君に託す。朔夜が君を支えてくれる。私は君を信じているよ》
きっと大丈夫だと……桜はハルを信じて託した。
どんな状況でもハルを守るという揺るがない信念を貫く朔夜にならハルと共に世界を救い出すことが出来るだろうと、信じていた。
思わぬ大役を任されたハルの中には、当然戸惑いが生まれた。
その戸惑いを感じ取った朔夜は立ち上がると、ハルの隣に立つ。
細い肩を抱くと優しく微笑みながら、ハルに頷いた。
朔夜の支えにより安心し、覚悟を決めたハルは朔夜に微笑みかけ、サクラを見上げ太陽のような笑顔を向けた。
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