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その日、桜は渇望した
【桜ひらひら舞い落ちて消えるーSIDEサクラ&ハルー】
そのサクラは忌み嫌われていた。
悪の華と蔑まれ、身体を刻まれ、枝から罪人を吊され、蝕まれていった。
それでもサクラは、いつしかまたサクラを慕い、春には花を愛でて笑顔が咲き誇る日がくるのではないかと、人々への希望を抱いていた。
だが現実は残酷なもので、サクラはキシキシと亀裂の入っていく自身から目を背けていたが、ある日思い知る。
黒髪黒目の幼い子どもが罪人としてサクラの幹に串刺しにされた。
それを見てサクラは怒り、そして荒ぶって子どもを串刺しにしたオトナたちを打ちのめした。
サクラは子どもの身体を自身の根元に埋葬する。
子どもの血をサクラが吸収し、より花びらは紅く染まった。
ミシッ。
サクラの身体が悲鳴をあげた。
そしてサクラは気づく。
自身の終焉のときはもう間もなく訪れるのだと。
かつて栄えた東洋の国では、サクラは邪なるものを正常化する力があるとされていた。
サクラはその人々の信仰にこたえ、罪を吸収していた。
だからサクラは薄紅色をしていた。
だが国が滅び、たった一本となったサクラが邪なるものを吸い続けた結果、血のような花へと姿を変えた。
それでもサクラが罪を吸い続けたのは、またいつか人々が笑ってサクラを愛してくれる日々を願ってのことであった。
それももう叶わぬ夢。
この身は朽ち果てるのを待つだけだ。
なぜだ。
こんなにも世界の罪を受け入れ、愛し続けたサクラに対しての結末がこんなものなのか。
人々は罪を犯すことをやめなかった。
人々はサクラを悪の象徴とした。
人々のために身を呈して平和を願ったサクラへのこれが運命なのか。
そう現実に気づいた途端、サクラは絶望し、大地をふるわせた。
このままサクラは忌み嫌われたまま、悪の華としてこの世から消えるのか。
そのことに気づいたサクラは、その日を境に世界の罪を吸収することを辞めた。
世界もまた、終焉に向かっていくのだと、サクラだけが気づいていた。
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