6人が本棚に入れています
本棚に追加
強い打撃で朔夜の身体は地面に打ち付けられ、頭から血を流し、思うように身体を動かせず呻き声をあげていた。
全身に流れる血がざわつき、頭には強烈な痛みが走り頭痛に声にならない悲鳴を身体はあげていた。
意識が飛びそうな状態だったが、何度も自分の名を呼び涙を流すハルの姿に朔夜はかろうじて意識を保っていた。
それと同時に地響きを立てながら地面へと戻っていく巨大な根が自分を吹き飛ばしたものの正体なのだと把握した。
血のように紅いこの木の正体は、世界に現存する数が一本と言われているサクラの木だった。
かつて栄華を極めていた東洋の国で神木として扱われていたサクラの木だが、本来の色は淡い薄紅色をしているはすだ。
しかしこのサクラは一見しただけでも断定できるほど異常な桜で、あまりの強烈な紅に朔夜は悪寒を感じ、背筋を奮わせた。
これまでに味わったことのない威圧感と恐怖を感じながらも、朔夜は最愛の彼女を助け出すために身体に鞭を打ち、立ち上がる。
彼女は紅のサクラに囚われの身となっていた。
今度は冷静になり腰から白銀に輝く剣を鞘から抜き、サクラの木に向かって歩みだした。
そのときに感じたのだが妙に左腕の感覚がない。
どうやら骨が折れてしまい使い物にならなくなってしまったようだ。
朔夜は舌打ちをし、歯を食いしばると左腕をダラりとたらしたまま、サクラを睨みつける。
朔夜の漆黒の瞳はどこまでも闇が深く、サクラへの憎悪が現れていた。
最初のコメントを投稿しよう!