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「悪の華。そう呼ばれるだけあるな。何の罪もないハルを拘束し、この大地を呪っている」
「朔夜っ……違うわ! サクラはっ……サクラは!」
「なぜハルを捕らえる!? ハルを返せ!」
大きな声でサクラに向かって叫ぶと、サクラはくぐもった声で笑い出す。
その態度に朔夜は眉間に皺を寄せ、剣を握る手に力を加えた。
《何故? そんなこともわからぬのか、愚かな人間よ。ならば貴様に問う。我が何故このように紅いのか、わかるか?》
こちらから問いかけたのだが、逆にサクラから問われる。
その問いの答えが見出せない朔夜は何も言うことが出来ず、静止したままサクラを見る。
サクラは普通は薄紅色だがこのサクラは深紅。しかしそれに理由があるというのか。
それにこのサクラがハルを捕らえている理由もわからない。
ハルは自分が囚われている理由を知っているのだろうか。
いや、知らなければ動くことも出来ないこのような状況に向かったりはしないだろう。
優しく思いやりのあるハルだから、何かきっと桜に言われてこの状況になることを選んだんだろう。
《その様子だとわからないようだな。やはり人間は愚かだ。今だ自分たちの過ちに気づいていない》
「過ち?」
《私は悪の華だ。世界を映す花である。花を愛する心。それさえもなくしたこの世の中に私は紅く染ったのだ》
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