【短編】おはようからおやすみまで

1/13
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 僕の彼氏はちょっとへんなひとだ。  16歳も上で、今年めでたく50歳になる。何でも知ってて、何でも持ってて、何でもできる大人。  でも、僕のことが大好きなのに、それは一度も言ってくれたことがない。「好き?」って聞くと、抱きしめられるか、キスされるか。いつも誤魔化される。それも嬉しいからそれでもいいけど、どうしても言いたくないみたい。  照れ屋なんだな。ほんとに。  今日は仕事に連れてってくれなかった。  大体毎日、僕は春臣の事務所についていく。春臣は社長だ。だから、その時は春臣じゃなくて、サキさん、って呼ばないと怒られちゃう。  一日中仕事をするカッコいい春臣を見て、一緒に帰ってきて、ご飯を作ってもらう。  僕も自分の仕事がある時は、ついていかないでうちにいるけどね。事務所に行っちゃうとギター弾けないし、僕のマックないし。  今日は慌てなきゃいけない仕事はないから、一緒に行きたかったんだけどな。 「今日は株主総会だからダメだ」 「かぶぬしそーかい? 何で?」 「大事な集まりなんだと、去年も一昨年もその前も言っただろう」 「そうだっけ。何するの?」 「説明してもわからんだろう。とにかく芳之はうちにいろ」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!