定期テスト

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「残り時間5分だぞー、しっかり見直ししろよー」  数学の野村先生、通称ノムちゃんが野太い声を発した。  50分のテスト時間における最後の5分にどれほどの価値があるだろうか。否、限りなく無に等しいと言っても過言ではないだろう。  全体の9割の時間が経過した今、ほとんどの生徒は解答を終えて、眠るか用紙の隅に落書きをしている。テストに絶望した生徒たちも例外ではない、彼らは既に悟りを開いているのだ。  そんな、子供の頃に見る企業CMくらい興味の湧かない報告に、一体この教室の誰が耳を傾けるというのだろう。  そう、僕だ。  ちょっと、ちょっと待ってくれよノムちゃん!残り5分だなんてそりゃないぜ。  ヤンキーと数学だけには目を合わせまいとして生きてきた僕は、テストでは赤点に次ぐ赤点。  お情けで2年生へと進級させてもらったが、もう次は無いだろう。勝てば進級、負ければ留年、僕の命運は今日のテストに握られている。  勿論、人生を賭けたテストにノー勉で挑むほど僕のバカは極まってはいない。この1週間、震える手で問題集を開き、逃げたい気持ちを必死に抑えて勉強した。  それなのに、蓋を開けると絵に描いたようなチンプンカンプンだった。俺のマークシートには黒い点が出鱈目に散らばっており、点数不足は明らかだ。  この状況下での5分前コールはまさに僕に対する『クリティカルヒット』、『会心の一撃』、『こうかはばつぐんだ!』である。
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