06・目撃

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 せわしなく揺らいでいる目。やばい、という表情。  けれど動揺が見られたのは少しだけ。はあ、と息をついてから奥村が物申してくる。 「なんだよ小笠原。お前、ちゃっちゃとモノ買って帰ってまえや」  あ然としてしまう。違う意味で。  奴のこの、居直りように。  言われるがまま行きそうになって、やめる。  ここで行ってしまってどうする。行ってしまったら、逆にもっと気まずくなってしまうような気がする。  意を決してコンドーム置き場へ近づいてやると、奥村は可笑しそうに鼻を鳴らしていた。 「おいちょっと。何でこっち来んのよ小笠原」  早くいなくなってほしいと思っているに違いない奴のツッコミは無視。 「あの、ね? 奥村」  それでもなんとなく、小声になってしまう。 「あのー。そういうのはね? 使う相手があってからこそ、あの、アレになるものなんだよ? 分かる?」 「……それぐらい俺にだって分かるわボケ。分かるに決まってるべや。いくつだと思ってるのさバカかお前」  奥村もいつのまにかトーンダウン。ばつが悪そうな顔。  こちらだってどう接すればいいのか分からないのだ。つとめて普通に振る舞っているだけ。 「なに、なーにそんなの買おうとしてるのさ。ちょっと気をつけてよもうさ、あたしが近くにいるっていうのに、あんたバカじゃないの?」 「お前が近くにいるとか、そういうアレじゃないしょ。 もーうるっせえな。もういいだろ? あっち行けよ。もう、なに言わせんのよ。使うから買うんでしょ?」 「使うのっ? あんたがっ?」 「……お前死んでくれ」  そこで奥村がふっと店の外に目を走らせた。妙によそよそしいその動きが気になって、視線を追いかけてみる。  ガラスごしに見えるのは、一台の黒いシビック。助手席に女の子がいた車だ。髪の長い女の子が。  コンビニの明るさとは対照的。ひっそりと暗い路地で、車の中で、きっと彼女は静かに誰かを待っている。ここからじゃよく分からないけれど。  でも、そういうことか。  母から電話がかかってくる前。外を歩いていた時に、車から出てきた男。あれは奥村だったのだ。
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