03・見合

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03・見合

 窓際の四人掛けのテーブルに、きつきつになって座る。社長夫人と奥村氏の方はかなり窮屈そうだった。    着席したとたんに 「んまあーまあまあまあ。噂どおりのきれいなお嬢さんで」  とは社長夫人。  この人のスーツの柄は薔薇なのか? 赤と黒の色の取り合わせだから派手。いかにも成金そうな人。褒められているはずなのに、どうも嘘くさいと感じてしまうのはなぜだろう。  とりあえず会釈をし、真向かいの奥村氏に目をやった。 「陽子さん、こちらね? 主人の会社の広報部に勤めてる奥村高志(たかし)さん。陽子さんと同じ、二十五歳。もともとは函館の生まれだそうで。本当にねえ、この人は明るくて人気があって。あ! ちゃんと真面目なんですよ? ちゃんと真面目。主人も目をかけていて――」  ぼんやりと、社長夫人の説明にうなずいた。  奥村高志。  この名前もどこかで聞いたことがある。  こう言っては失礼だが、ごく平凡な名前だからそう思うだけかもしれないが。  契約してくれたお客様だろうか。  保険に加入させる際は、きちんと説明するため一人一人に会うようにしている。数ある顧客の中の一人かもしれない。でも顔は全員覚えているので奥村氏は違うはず。  第一、この人たちの会社には営業に出向いたことがない。道内でかなり名の知れたドラッグストア「ハトヤ」には。  でも。なのに。  どこかで見たことがある。  あの、安っぽいスナップ写真を見た時は、なんとも思わなかったのに。
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