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04・実際
「……は?」
ぽかんとしてしまう。
これはいったい何ごとだろう。この人の急変ぶりは、どうしたことだろう。
「なーに言っちゃってんのよ君。なにが『は?』さ。お前、なーにをかしこまっちゃってんの? らしくないって。それじゃイカンてヨーコオガサワラ」
らしくない?
何を言っているのだろうこの男は。
少し前に会ったばかりの人間に向かって「お前」ときやがった。さらにフルネームをふざけ呼び。ヨーコオガサワラ。
「ねえちょっと小笠原」
ジャケットのポケットの中を手探りし、奥村氏はテーブルに何かを叩き置いてくる。
「こんなのをさあ、真面目ぶって俺に渡してきやがって。なんなの? 君。 殺す気? 俺を笑い殺す気ですか君は」
それは名刺だった。先ほど、この男に渡した名刺。
ライフアドバイザーYohko Ogasawara。
「……え?」
渡しちゃ、だめでしたか?
こわごわと尋ねてみると、奥村氏は首をかしげていた。不思議そうに。
「ん? あれ?」
そうして、テーブルに覆いかぶさってくるかのように近づいてくる。腕組みもして。
至近距離で、目が合った。
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