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つりあがり気味の目は一重まぶたかと思いきや、よくよく見ると奥二重。
なかなか逸らせないのはその目に力があるせいだ。
「……っていうかあなた、俺のこと分かんないわけ? もしかして俺って気づかないで見合いしてたってわけ?」
「はあ」
訳が分からずうなずいた。
写真もちらりと見ただけだ。彼には興味がなかったし、事前の情報は聞き流していた。
呆れ顔の奥村氏が、ドカッと椅子へ戻っていく。
「……なーん。お前はよお。バカでないの? ほんとに」
バカでないの?
それにはさすがにカチンとくる。
「バカって、何なんですかねっ? さっきから好き勝手言いすぎじゃないですかっ?」
「あー、だめだ。だめだわあなた」
あのねえ?
と、再び身を乗り出された。
「俺だって俺。奥村高志。おーくーむーらーたーかーし。ほら、K小学校んとき同じクラスだったしょや。途中で俺は転校しちゃったけれどもね? 本っ当に覚えてない? あれえ? 俺そんなに存在感なかったっけか。いやあ、それはおかしいなあ。いや、かなり頭がよろしくて勉強はお出来になってたし、スポーツもお出来になってたし、かわいい顔をしてらっしゃったしで、誰の記憶にも鮮やかに、この僕がねえ? 印象に残っていると思ってたんですが。あー違うのかなあ、そうで無かったのかなあ、ほんと」
何なんだこの男。
それにこの話し口調も何なんだ。
まるでダムの水が放流されたかのよう。一気にまくしたてられて呆然としてしまう。
「……K小の。おくむら、たか、し?」
「そう。わたくし、奥村高志」
記憶をむりやり頭から引っ張り出す。むりやりに。
そうすると、真っ黒に日焼けした、やたらと元気のいい男の子が浮かんできた。
変声期をむかえていない、ハリのある大きな声が印象的な男の子。いたずらばかりしてきた、やかましい男の子。意外と勉強が得意だった気がする男の子。そして。
途中で転校していった気がする男の子。
「あーーー!! あの! チビの奥村か!」
大声をあげて奥村氏を指差した。興奮してしまう。懐かしさより驚きが先。
奥村氏がククッと笑ってつぶやいた。
いやあ、小笠原さん。
「チビは余計よ、チビは」
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